解雇規制

『解雇規制』は正社員という既得権維持のためのもの

『解雇規制』とは、企業に対して「雇用した社員を解雇する事が実質できないように」かけてある規制の事です。
雇用される側の立場からすれば、就職した会社から解雇されてしまう事から守ってくれる良い規制だと思いやすいですし、私も昔はそう思っていたのですが、このエントリーでそれは違うという事を説明しようと思います。

そもそも企業は働き手が欲しくて人を雇用しているはずです。では、雇用した従業員を解雇しようとするのはどんな時でしょうか。次の5つが考えられます。
(ちなみに企業の倒産による解雇は、企業そのものがなくなってしまうので規制のしようがなく、『解雇規制』の話にはなりません)

① 企業の縮小
業績不振などで企業自体の規模を縮小せざるを得なくなった時。

② 企業内の事業撤退
企業が行っていた事業の中で、需要がなくなったものや不採算なものを撤退させる時。

③ 仕事のオートメーション化
人手に頼っていた仕事をオートメーション化する時。

④ 労働者の能力が低い
雇った労働者の能力、もしくはやる気が著しく低くかったり態度に問題があるなどで労働生産性を下げてしまっている時。

⑤ 個人的いざこざ
上司が部下を気に入らないとか、職場に嫌な奴がいるなど。

大まかに ① ② ③ は企業全体レベルでの理由、④ ⑤ は職場レベル、個人レベルでの理由といったところです。

解雇規制によって多くの労働者 (被雇用者) が解雇を免れているのは事実でしょう。しかし、解雇規制によって解雇を免れているのは正規雇用者、いわゆる「正社員」であって、非正規雇用の「パートタイマー」「アルバイト」「派遣」などは解雇規制の範疇ではありません。
なので、企業が人員を調整するときは必ず正社員は解雇されず非正規雇用の労働者が解雇されます。特に派遣などが人員の調整に利用されています。
解雇規制により解雇ができない状況の中で企業は正規雇用での人員確保に慎重にならざるを得なくなっているはずです。新卒採用では学歴 (学校歴) のハードルは上がり、中途採用はそうやすやすとはできないでしょう。中途採用でも職歴のハードルは上げざるを得ないわけです。なるべく正社員は限定して非正規雇用を増やす事になり、正社員は少ない椅子となってしまっているのです。

「派遣を安い給料で使っていらなくなったら解雇するなんてけしからん。派遣などという労働形態は悪である。」などという類の声が解雇規制支持派からよく上がり、また支持もされます。
しかし、企業が派遣会社に払っているお金は決して安くはないと言われています。派遣先の企業から支払われる料金から派遣会社がマージンを取った後に派遣労働者への給料が支払われるので、派遣労働を利用している企業が払う額と派遣労働者が受け取る給料にはけっこうな差があるわけです。なので派遣を利用している企業からすれば決して安く済んでいるわけではないのですね。
ではなぜ安く済ませられるわけではないのに企業は派遣を使っているかというと、人員を削減したい時や、能力を含め労働者との相性が悪かった時に雇い続けなくても済むからです。
従業員を正社員として雇用すると解雇規制があるために解雇する事が実質できなくなっているので、人員の調節ができる「派遣」という形態の労働者を必要とせざるを得なくなっているわけです。解雇規制がなければそもそも企業は派遣を必要としません。「派遣」を生んでいるのは解雇規制なのです。

では派遣を含め非正規雇用自体を禁止してしまったとしたらどうなるでしょうか。

① 給料の減少
状況によって人員整理ができる非正規雇用があるおかげで正社員の給料が相対的に高く設定できている現状が維持できなくなるので、全員の1人当たりの給料を下げられるという形で労働者全員がリスクを負わせられる事になる。

② 雇用の減少
全員誰も解雇できないとなればほとんどの企業がそもそも従業員自体を極力増やさない、もしくは減らし、できうる限り雇用を最小限に抑えるようになるために雇用が減る。

③ 企業の減少
労働生産性が下がり倒産する企業が増え、また新たな企業が起こる事も減り、個人で仕事をしたり、友人、知人、家族のみで仕事をしたり、コネ入社のような事業形態が増える。

④ 企業のブラック化
リスク回避のため人を増やさなくなり、1人当たりの業務が激化する。休憩もままならず残業も増える。休みもろくに取れず有給出社などが横行する。加えて、企業が減り、減った企業も雇用を抑え、就職のハードルも限りなく上がるため転職が困難になり、皆がなんとか得た雇用にしがみつくため企業がやりたい放題となる。鬱や過労死や自殺が増える。解雇ができないためイジメなどいやがらせにより自主退社に追い込む事が横行する。

非正規雇用をなくし、完全に解雇が禁止などされた場合、労働市場の流動性がなくなるため企業がさらにブラック化し、労働環境のさらなる悪化は避けられません。また、多くの人の給料が下がるため生活水準が下がり、雇用や企業自体も減るため失業者が増えます。税収も減りますから社会保障も頼りないものになってしまいます。国が没落しますし、誰にとっても大きなマイナスにしかなりません。

とどのつまり解雇規制というものは、正社員という既得権を得られている者がその既得権を失う事を避けたいがためのもので、それ以上のものではありません。そのために労働市場のフェアネス (公正さ) が棄損されている状況なのです。


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